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音のある風景「虫聴き」

台風の被害はございませんでしたでしょうか?
想像を絶するほどの被害状況に、心が痛みます。
心よりお見舞い申し上げます。


大型で長引いた台風もようやく去り、
日が傾くころから虫の音が聴こえてきます。

江戸時代には、「虫聴き」と称して、
わざわざ郊外まで出かけることがありました。
お花見と同じような感覚だったのでしょう。
今はお花見は残っていますが、虫聴きはすっかり廃れてしまいました。


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江戸時代の虫聴きの人気スポットは、第一に「道灌山」です。
『江戸名所図会』にも取り上げられています。
道灌山は現代では西日暮里駅の、
すぐ上にある西日暮里公園がそこにあたり、
確かその表示が出ています。
広重の絵でも、虫の音を聴きながら一献傾け、
月も愛でる趣向のようです。


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      左の図は「広尾の原」。
      当時はまったくの郊外で、
      古川(渋谷川)が流れる湿潤な土地でした。
      ここは蛍狩りの名所でもあったところで、
      当時はどんなにか水の音も、耳に心地よかったことでしょう。
      渋谷川は今は、渋谷駅から上流は暗渠となっています。

 

江戸時代、風景は単に見るだけでなく、
聴くものでもあったのではないかと思います。
「音」を聴く風景です。
虫の音、川や堰、滝などの水音、風が吹き草むらの揺れる音・・・、
自然の風景にも、さまざまな音を聴いて、
風景を感じていたような気がするのです。
それが日本の風景の捉え方かもしれません。

ではどうして風景を愛でることから、
その「音」の部分が欠落してしまったのか?
鳥越けい子さんとおっしゃる大学教授の方がこうおっしゃっています。
「明治以降受け入れた西洋近代の美意識が、
ビジュアル中心の世界で、音風景は弱体化していった」
残念なことです。



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一番上の『江戸名所図会』を元に、広重が虫聴きの浮世絵を描いています。


例えば夕暮れのころ、まだ月は出掛かっている時刻で、
田舎の駅のホームで列車がやってくるのを待っている。
気がつくと集く(すだく)虫の音。
耳を澄ますと、「リ~ン、リ~ン」と鈴虫。
「キリキリキリキリ」と鳴くのはコオロギ。
「チンチロリン」は、あ、あれは松虫。
列車が明りをともして、カーブを曲がって駅に近づいてきます。
虫の音が一瞬、高くなり、そして静かになったような・・・。
そんな風景が、今私の脳裏に浮かんでいます。

虫の音、聴こえませんか?
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by edo-ukiyo-doll | 2011-09-06 22:50 | 江戸歳時記 | Comments(0)