枇杷の葉のお茶を飲んでる方もいらっしゃるのではと思いますが、
江戸の頃には、「枇杷葉湯」といって、枇杷の葉に、
肉桂(にっけい)や甘草(かんぞう)など、数種の薬草を混ぜて煮出した、
いわばハーブティーは、夏の定番の手軽な煎じ薬でした。
暑気当たりやかくらん、くだり腹に効くそうで、
甘草が入っているので、ほのかに甘いのでしょう。
無料で飲ませて宣伝し、良ければ買ってもらうという販売です。
上の図の右にいるのが
枇杷葉湯売り。
拡大してみます。
「枇杷と桃 葉ばかりながら 暑気払い」
桃の葉も、あせもや湿疹など皮膚の炎症などを抑えるので、
お風呂にいれたり、特に夏には欠かせないものです。
枇杷も桃も実を食べるのに、「葉っぱばかり」使うのと、「憚りながら」をかけた川柳。
これも枇杷葉湯売り。
本店は京の烏丸にあり、江戸には天明(1781~88年)の頃に、
薬炉を取り付けた箱を担いで、通りを行く人々に飲ませる・・・・
ってなことを、太田南畝が書いているそうで、
これが「京の烏丸枇杷葉湯」という薬売りです。
箱には烏がトレードマークになっていて、夏の江戸の風景にはよく見かけます。
「京の烏を江戸で売る熱い事」
「真黒になって売るのは烏丸」
一方の定斎屋。
「是斎屋(ぜさいや)」ともありますが、
「じょさいや」というのが江戸風のようです。
町を売り歩く薬屋ですが、
夏の諸病に効果があるという薬を売っているので、
江戸の夏の風物詩ともなっているほどです。
濃紺の印半てんに股引(夏は脚絆のことも)、
炎天下でもけっして笠や手ぬぐいはかむらず、
「これを飲んでいれば、ほれこの通り暑気もなんのその」
という宣伝でもあるわけです。
「定斎屋は色が黒いが自慢なり」
天秤棒で箱を担いでいますが、
この箱には朱や青貝の螺鈿で、
「定斎」あるいは屋号などが入っています。
屋手長の箱には、小さな引き出しがたくさんあり、
ここに付いている取っ手が「鐶(かん・金属のCの字型)」になっていますから、
歩くたびに、カタカタとリズミカルな音がします。
売り声を上げずとも定斎屋が来ているのは、この鐶の音でわかります。
「鬼のかくらん」といいますが、
日本では暑気あたりや日射病などのこともさしたようで、
江戸の頃には経験的にこのような薬で、対処していたんですね。