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『仮名手本忠臣蔵』の世界

この時期になりますと、デジタル社会の今でさえ、
「赤穂浪士の討入り」の話を必ずどこかで目に耳にします。
私たちがその顛末を知っているのは、
真山青果が書いた『元禄忠臣蔵』が基盤となっているのでしょう。
これは史実に近いもので、2世市川左團次のために書かれ、
昭和9年に歌舞伎座で初上演されました。

『仮名手本忠臣蔵』の世界_f0186852_638027.jpg

一方、ご存知歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』は、
史実からフィクションの世界へと、大きく跳んでいます。
江戸時代は「歌舞伎」とは言わず、一般的には「芝居」と呼んでいましたが、
常に新しいもの、人々の興味を引くものを上演しようという姿勢でしたので、
元禄15年師走の14日に起きた赤穂の浪士たちの吉良邸への討ち入りは、
当然のごとく芝居のモデルになりました。
しかしこの事件は反体制的とされ、
これももちろん幕府から禁止されてしまいます。


実際の事件から46年たって、
『仮名手本忠臣蔵』が大坂の竹本座、
これは人形浄瑠璃の小屋(劇場)ですが、
ここで初めて人形で上演され、
3ヵ月後には歌舞伎として公演されたのでした。
やっと浅野家の再興が認められてから、
堂々と舞台にも乗せられたというわけです。

『仮名手本忠臣蔵』の世界_f0186852_6385268.jpg

さてこの『仮名手本忠臣蔵』は、全部で11段からなりますが、
解禁されたとはいえまだ、
史実を描ける世の中ではありませんから、
『太平記』の世界を借りてきました。
『太平記』とは南北朝の混乱期を描いた、
長いなが~~~~い軍記物ですが、
江戸時代にはとってもポピュラーなお話なので、
すかさずその世界を借りて、わかりやすくエキサイティングにして、
これでもか~~~~! 
みたいに、見どころてんこもりにしたのです。


その内容とは・・・・・・・
独立を目指す足利尊氏を討つ新田義貞軍ですが、
足利軍の勝利で室町幕府が作られましたね?
元禄のお話が、室町時代までスリップします。
足利幕府のお話なのに、
なにもかもが、上演されている当時(寛延元年・1748年)の文化であり服装であり、
現代の私たちの観点からしたら、
「いくらなんでもヘンでしょ、それ!」と思いますが、
いいんです。
江戸の芝居、時代物はたんにお話や人物を「借りてきた」だけなのです。



話はこうです。
室町幕府の将軍・足利尊氏の弟君のまえで、
この兜が、新田義貞の兜か否かを確認するところから始まります。
その場に現れた顔世御前は、
塩治判官(赤穂は塩、それを統治する「判官」という役職らしい)の妻ですが、
彼女に横恋慕したのが高ノ師直。
史実で言えば、吉良上野介です。
当然、師直の恋は受け容れられず、
その腹いせに、饗応役の桃井若狭守と塩治判官をいびり出し、
桃井さんも判官さんも師直を斬ってやる! と激怒しますが、
実際に斬ってしまったのは、塩治判官でした。
『仮名手本忠臣蔵』の世界_f0186852_6425068.jpg
                               高ノ師直⇒ 
『仮名手本忠臣蔵』の世界_f0186852_6421180.jpg
  「仮名手本」で有名な「おかると勘平」は、
   塩治家に使える身ですが、
  家中の恋はご法度ですから駆け落ちし、
  やがて勘平は狩人になります
  (あずさ2号は忘れてね)。


『仮名手本忠臣蔵』の世界_f0186852_649192.jpg ←桃井若狭守


ある夜、勘平がイノシシと間違えて撃ってしまったのは一人の男。
そして、男の懐には50両。
勘平はこれをちょうだいして、
これで自分もあだ討ちに参加できると
家へ帰りますが・・・・。
                                 勘平に撃たれてしまった男。
                               実はさっきおかるの父を殺して、
                                 盗んだ50両を持っていた。
                        斧定九郎、実は塩治家の重臣・斧九太夫の息子⇒




主君のために50両を調達したつもりが、
おかるの父を殺してしまったと思い込み、
勘平は切腹してしまいます。
『仮名手本忠臣蔵』の世界_f0186852_6495083.jpg
               ↑おかるは夫のために祇園に身売りし、これはその別れのシーン。

一方、塩治家では城も明け渡し、他の家臣たちからは、
あだ討ちを迫られる家老の大星由良之助。
『仮名手本忠臣蔵』の世界_f0186852_6503349.jpg 
  これは有名な7段目、祇園一力の茶屋。
  由良之助は、敵討ちの心を隠し、
  祇園で放蕩三昧を続けます。
  妻からの密書を読む由良之助ですが、
  床下には敵方に寝返った九太夫、
  上の間にはおかる。
  ふたりに密書を読まれてしまいます。

  ここも話は複雑なので、えへへ・・・割愛。



『仮名手本忠臣蔵』の世界_f0186852_6511556.jpgまあ、話はこうして進んでいき、
10段目はこれも男の中の男、
討ち入りのための武器調達をした「天川屋義平」が、
捕り手に向かって「天川屋義平は男でござる」と名言を朗じます。


                               天川屋義平


そうやってラストの11段目はいよいよ討ち入りから、
引き上げの花水橋(両国橋のつもり)のシーンへとかわります。


『仮名手本忠臣蔵』は、「芝居の独参湯(どくじんとう)」ともいわれます。
独参湯とは、朝鮮人参を使った万病に効能ある特効薬のことで、
上演すれば必ず大当たりをとるので、こう言われています。

















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by edo-ukiyo-doll | 2012-12-14 15:35 | 都市伝説