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酒の燗に紅葉を焚く

以前ブログで「紅葉」と「楓(かえで)」の区別がわからない、
と書きましたが、わかりましたよ~!
区別などない、紅葉も楓も同じもの、二つ呼び名があるってことでした。
すっきり~。

ところで、紅葉狩りにはもうおいでになりました?



酒の燗に紅葉を焚く_f0186852_793097.jpg


















江戸の人々にとっては、紅葉狩りもまたイベントの一つ。
春の花見(桜)が大衆受けするイベントなら、
紅葉狩りはちょいと風流人たちの対象というところ。
そして風流の表し方に、こんなのもあります。



酒の燗に紅葉を焚く_f0186852_6474652.jpg 
 これは鈴木晴信の画ですが、
  位の高い遊女が客の若者に、
  火鉢で燗鍋を温めています。
  そして炭のかわりに、
  禿に集めさせた紅葉を焚いています。
  なるほど風流じゃあ、
  とここで終わってはいけません。
  背後にある衝立(ついたて)をご覧くださいね。
  いろんな文字や絵が貼ってあり、
  これを「貼交(はりまぜ)衝立」といいます。



酒の燗に紅葉を焚く_f0186852_6551321.jpg


衝立にこんな文字が書かれています。

「林間煖酒焼紅葉」

これは中国・唐の時代の詩人白居易(はくきょい)の詩の一節。
「林間に酒を暖むるに紅葉を焼(た)く」
というものです。
これに倣って遊女は紅葉で酒を温めているわけです。


「林間煖酒焼紅葉. 石上題詩掃緑苔」
と続くのですが、
「林間に酒を暖むるに紅葉を焼き、石上に詩を題するに緑苔を払う」
(りんかんに さけをあたためて こうようをたき、
せきじょうにしをだいしてりょくたい をはらう)

平安時代からあまりにも有名な一句です。
親しい人が山に帰るというので、共によく遊んだ山の寺でのことを詠ったもので、
林間に舞い散る紅葉を焚いて酒を煖め、
石上に緑の苔をはらって詩を作ったよね!
という詩です。

さらにその後には、
「惆悵旧遊復無到 菊花時節羨君廻」
と続き、その意味は、
だけど残念ながら、あの遊んだ地にもう二度とは行けないのだ。
菊の花の咲くこの時節に、帰っていく君を羨ましく思うよ。

幼いころから遊んでいた仲間が山に帰っていく。
その山での楽しかった日々を思い出しているのです。


もちろん、春信の絵の中のお話しですから、
お客も前髪立ちの若者というか、少年? になっていますが、
江戸・吉原の位の高い遊女たちは、漢詩をも身につけ、
お客にこのような風流なもてなしもしていたようです。
当然、客もこの詩は知っていて、
雨の紅葉を、遊女と知的な遊びを楽しんでいるのでしょう。












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by edo-ukiyo-doll | 2015-11-19 07:35 | 江戸歳時記