<   2010年 10月 ( 4 )   > この月の画像一覧

「秋草の娘」

f0186852_14562220.jpg

「秋草の娘」 


「萩が花尾花葛花撫子の花女郎花また藤袴朝顔の花」と、
山上憶良が詠んだ歌が『万葉集』に収められている。
憶良はまた
「秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花」
とも詠んでいる。
この七種が「秋の七草」で、
「春の七草」が食用の草を対象としているのに、秋は鑑賞用の草花になる。
したがって秋の七草の取り合せの美しさは、染色、工芸、絵画にと描かれる。

「萩」は野山でもごくふつうに見られ、
根や茎は頭痛やめまいに効果があるといわれる。
「尾花」は穂の出たススキのこと。
雑司が谷の鬼子母神のススキのみみずくは、
浮世絵にも描かれる古くからのみやげもの。
「葛」は全国どこの山野にでもあり、
根からは葛粉や風邪薬として今も一般的な葛根湯がとれる。
「撫子」は鮮やかなピンクの花を付けるので、色のpinkは撫子に由来する。
種は薬用となり利尿や消炎剤となる。
「女郎花」も秋草の代表格の黄色が鮮やかな花で、
これも根は利尿や消炎、膿を出す薬となる。
「藤袴」は淡いピンクがかった小さな花を付ける。
「朝顔」は桔梗の古名で、根は痰切りや排膿薬として用いられる。

 この作品は、黒襟をかけた、藍鼠色に大柄の花と貝文様の振り袖に、
段染の麻の葉絞りの帯を、引き抜きに結んだ娘。
手には、摘んで来たばかりの尾花と桔梗。
秋の花を供えて待つ今宵の月は、十七夜である。





*注 十七夜は、この作品上の設定です。






*すべての作品、文章の無断転写、複写を禁じます。
[PR]
by edo-ukiyo-doll | 2010-10-23 15:00 | 「江戸浮世人形」 | Comments(0)

意外だった江戸の料理

先日、味の素の食の文化センターで、
松下幸子先生の江戸の食文化の「江戸の食材と料理」の講演をうかがうことができました。

食材は「魚介類」「獣類」「野菜類」に大別され、
それぞれにはどんなものが、どんなふうに調理されていたか、文献からの資料をもとに、盛りだくさんのお話で、
これまで自分にはナゾだったことや、まったく知らなかったことなど、ワクワクな2時間になりました。



江戸時代は260余年もありますが、江戸らしい食文化ができるのは、
暴れん坊将軍・吉宗の時代。
化政期(文化・文政期)には江戸の食文化は最も華やかな時代を迎えました。
たくさんの高名料亭はこの時代に花開いたのですね。

f0186852_20152184.jpg
左は両国の有名な料亭「青柳」





さて、先生のお話の中で、
私の鼻がピクピクしたのは(とっても興味を持った)、
こんなことです。

意外や意外part1.
生もの(生魚)がたくさん食べられていた。
(ただし、料理書に残るほどの料理ですから、裏長屋のおかずではない)
料理法で一番多いのは「汁物」ですけれど、
「鱠(なます)」と「刺身」をあわせると、一番多い料理法となります。
冷蔵できない時代に、生魚がたくさん食べられてたなんて。

f0186852_20331115.jpg

               英泉描く日本橋。
      「魚河岸」があるので(今はないデス)、
            橋の上を魚が通ります。


拡大すると、
f0186852_20354861.jpg

天秤棒で担いでいるのは
大きなマグロ。
その向こうにひらめ。
貝のようなものも見えます。

f0186852_20164363.jpg



                 季節は冬ですから、ザルで担いでいるのは
                          ブリ・・・かもしれません。




意外や意外part2.
ももんじ屋にかぎらず、獣類をけっこう食べていた。
幕府のお触れでも、こういう獣類を食べたら身が穢れるので、何日間は寺社への参詣は禁ずる・・・というもので、食べたら罰する・・・ということではないようです。
元禄期に出されたお触れでは、たとえば牛・馬を食べたら150日間、ブタや鹿なら70日間は参詣禁止。
鳥類は参詣前日の朝6時から食べてはなりません。
とか。
上つ方も獣類はひそかに食べていたようで、これはちょっと調べてみたいです。

握り鮨のお話もありましたが、
長くなるのでまたいつか。

意外や意外part3.
野草や花が普通に料理として食べられていた。
七草粥だけでなく、現代では「野草」と呼ばれる草は、歴とした「野菜(青物)」として、料理になっていたんですなぁ。
花はボタン、シャクヤク、クチナシ、ノウゼン(ノウゼンカズラか?)などなどで、「さしみ」にして食べる・・・など。
「さしみ」というのは、江戸時代は魚に限らず、調味料をつけて食べる料理を「さしみ」と呼んだそうです。

魚の「刺身」は「鱠」の一種で、鱠というのはもとは「膾」と書いたのですが、「魚」と「月」の違い。
そうです、「肉月」は「獣類」だから。
「なます」は魚でも獣でも身を細く切って、野菜などと和えたものをいい、最初から味をつけますが、
「さしみ」は一口大にスライスしたのを器に盛りつけ、食べるときに調味料をつける料理を言うのだそうな。
なので、野菜も湯がいてお醤油なんかつければ「さしみ」というのですね。



ほかにもた~くさん感心したことあり。
興味は尽きないのでした。




*注 掲載している画は、松下先生の講演で使用されたものではありません。
[PR]
by edo-ukiyo-doll | 2010-10-14 12:11 | 江戸の食べ物 | Comments(0)

江戸の「食」の浮世絵展ですよ~。


やっと秋らしい気温になってきましたね。
今年は紅葉はあまり期待できないでしょうか?
野菜も高いし、鮭も秋刀魚も高いですね・・・・。

そんな今年の秋はせめて、江戸の秋に思いをはせましょう(^^)

「江戸茶話会」と称して、拙作を展示し説明しながら、
制作で知ったさまざまな江戸のことをお話させていただいております。
中でも「食べ物」に関する話題は多くの方に興味を持っていただくようです。
だって食べ物は古今東西、喜びであり楽しみであり・・・
多くの共通点を持っていますものね。



さてさて、食欲の秋にふさわしい展示会のお知らせです。
味の素の食の文化ライブラリーで、
「錦絵に見るパロディーと食」
という特別展示をしています。


f0186852_1564948.jpg










入り口もすてきに凝ってます。





f0186852_1584660.jpg





会場の中はこんなかんじ。









味の素の所蔵の錦絵の中から、「蕎麦」「役者と食」「世相と食」をテーマに選んだ錦絵の展示と、
テーマに沿った演出がおもしろいです!

f0186852_1572191.jpg





役者の顔がずらり・・・・


f0186852_1574234.jpg

つまみを持ち上げると・・・・



f0186852_1581080.jpg
あとはご覧になってのお楽しみ!















味の素は「食」の浮世絵コレクションでも有名ですが、
さすが「食」の専門家! と思いを深めます。




それから、拙作『江戸浮世人形』の
「時そば」と「団十郎の冷や水売り」も展示されていますので、
ご覧いただければ幸いです。

f0186852_1591399.jpg
「団十郎の冷や水売り」・・・浮世絵をもとに制作。



f0186852_1593574.jpg













右の写真は「時そば」
・・・落語のワンシーンを作りました。

















●会期/2010年10月5日(火)~11月30日(火)
 *ご注意! 日曜・祭日及び10月1日(金)、2日(土)、4日(月)、11月1日(月)は休室
  ですから、お間違いなきよう。

●時間/午前10時~午後5時

●会場/味の素食の文化センター   
〒108-0074東京都港区高輪3-13-65 味の素グループ高輪研修センター内

●交通/
[1]都営地下鉄 浅草線 高輪台駅 徒歩3分
[2]JR品川駅 高輪口      徒歩15分


f0186852_15495292.jpg


詳細はこちらですが、アドレスのアップの仕方がわかりませんで、ごめんなさい!
http://www.syokubunka.or.jp/facilities/exhibition/ki_20101005.html
「味の素食の文化ライブラリー」で検索していただいたほうが早いかもです。


ではみなさま、秋のひととき、江戸の世界でおいしいものみつけてね~。
[PR]
by edo-ukiyo-doll | 2010-10-10 15:47 | いろんなお知らせ | Comments(0)

江戸のきのこ


なにが好きって、秋にはやっぱりきのこです。
海まで40メートル、山まで100メートルのところで生まれ育ちましたので、
海の幸と山の幸で、食いしん坊になってしまいました!
秋にはかごいっぱいのきのこが、とても懐かしいです。

きのこ・・・といえば、いまは松茸一辺倒の風がありますけれど、
江戸ではあまり松茸が採れませんでした。
かろうじて、上州大田の金山(かなやま)が、旧暦8月8日から、
「お留山」となって、将軍家へ献上の松茸を収穫します。
その松茸をかごに入れ、琉球の畳表でくるみ、紺の染麻でしっかりくくると、
さらに封印をし、「御松茸御用」と言う札を先頭に、宿から宿へと人足を換え、
いわゆる「宿送り」をして、昼夜走りぬき、江戸城へと届けられました。
なんとその松茸は、十万石大名並みの扱いだったとか・・・。

f0186852_835062.jpg
そんなですから、江戸では松茸はとんでもなく高価でした。
きのこもまた「江戸の初物四天王」のひとつですが、
現代の絶大な人気の松茸ではなく、
ふんだんに採れる「初茸」に人気がありました。
初茸の画や写真がなくてゴメンナサイ。
松茸のような強い香りはなく、もっとおだやかな繊細な香り。
秋の山の香りがします。
傘の大きさはせいぜい握りこぶし程度。
傘は開いていて、裏にはきれいな細かいひだがあり、
傷をつけると、その部分は藍色に変色します。
もろいので丁寧に扱います。

江戸では「初茸売り」が来ましたが、
京坂にはいなかったそうですし、
上方では、初茸はあまり採れなかったようです。
江戸の近郊の名産に、下総国葛飾郡(しもうさのくにかつしかこうり)
小金の「初茸」がありました。
現代の千葉県松戸のあたりです。


f0186852_19133980.jpg
芭蕉の句に「初茸やまだ日数経ぬ秋の露」というのがあって、
秋に入ってまだ何日もしないのに、初茸が生え、朝露を帯びているよ
と言うほどの意味ですから、初茸は盂蘭盆会の頃にはもう出ているようです。
関西蕉門の中心人物の向井去来には「松茸に相生の名あり嵯峨よし野」というのがあって、
ん~~、やっぱり、松茸は西のほうに多いのかと思わせます。

初茸は直火に網をかけ、傘を下にして網に載せたら、軽く塩を振って焼きます。
ひっくり返して軸を転がすように軽く焼き、そのままお椀に入れ、お湯を注ぎます。
しばらくすると、上品な香りと、えもいわれぬほのかな甘さが、
鼻を舌を、秋で満たしてくれます。

子どもの頃は、初茸をたくさんいただきました。
子どもながらに、これはおいしい! と思ったものです。
[PR]
by edo-ukiyo-doll | 2010-10-01 19:15 | 江戸の食べ物 | Comments(0)

「江戸浮世人形」人形師・岩下深雪の江戸はここにあり       ホームページ開設 http://edoukiyoningyo.edo-jidai.com


by edo-ukiyo-doll
プロフィールを見る
画像一覧