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夏の物売り。「声に惚れる」蚊帳売り

湿度が高く高温の日本の暮らしは、
さまざまに夏への配慮がされています。
江戸は卯月(4月)から夏なので、
4月になりますと、夏向けの物を携えて、
さまざまな物売りがやってきます。

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蚊帳(かや)ってご存知ですか?
この画のグリーンのネットのようなものが「蚊帳」で、
この中にいれば蚊から身を防げます。


江戸は水の都ですし、本所深川方面など湿地帯も多く、
夏にはなにはなくとも、まず蚊帳!
というわけで、4月(現代の5~6月ころ)に入ると、
蚊帳売りがやってきます。

蚊帳売りが来るとすぐにわかります。
「かや~、もえぎのか~や~~~~~」
と、なんとも美しい声で、なが~~~~~く音を引いて呼びかけるのです。
柳は青く風に揺れ、
初夏の空にす~っと上っていくような、すがすがしい声です。



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江戸の町の初夏の風景。
皐月(5月)なので、端午の節句の菖蒲や、
節句の飾り物を担いだ人がいますね。
魚屋が担いでいるのは、鰹です



蚊帳は古く中国から伝わってきましたが、
江戸時代には多く近江で生産されるようになり、
日本橋通町一丁目の大きな問屋ができます。
ちょっとセレブには白麻のぼかし染めで、見た目も涼しげな蚊帳。
裏長屋でも中古でツギが当たっていても、蚊帳は持っています。

さて、売り歩くのは、蚊帳屋の手代と、アルバイトの担ぎ手の二人一組。
二人とも菅笠をかぶり、手代は扇子など手に、
荷はもっぱら雇われた男がかつぎます。
ですが、このアルバイトの男、只者ではない。
まず、美声でなければならず、採用決定の後は、
新人なら、呼び声の大特訓が始まります。
だいたいは、荷を担ぐアルバイトは例年決まっているようです。
一声で、半町(50メートルくらい)歩くそうですよ。
やってみます?

手前が手代さんで、夏羽織を着ています。
天秤を担ぐ男は、腹掛けに半てん
(この人はゆかたに見えるけど、やっぱり半てん)、
手甲に脚絆、わらじ履きです。
塗りの箱には店のロゴ。
箱の上には、包装した蚊帳を載せています。



この特殊な呼び声の始まりは、ある男の喧嘩がきっかけでした。
大坂の茶店で友達と喧嘩し、傷を負わせてしまい、その場を逃走して、
江戸まで逃げ延びた天満喜美太夫(てんま・きみだゆう)。
彼は説教節の上手でしたので、
江戸は駿河町に住み着き、蚊帳担ぎに雇われたとき、
生来の美声で「もえぎのかや~~~~~」と、
呼び声に節を付け売り歩きます。
すると、どうでしょう!
人々はこの声に「うかれ」、この年の売り上げは、驚くほどよかったそうです。
以来、蚊帳売りの担ぎ手は、呼び声で江戸人に夏を告げるようになりましたとさ。



節電時代に入って2年。
蚊帳がまた売れ始めているそうです。
家族みんなでひとつ蚊帳で、虫籠などつるして・・・・・・、
なんてね! きっといい夏になりますね。









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by edo-ukiyo-doll | 2012-06-22 10:50 | 江戸歳時記 | Comments(0)

そうだ、江戸へ行こう! 蛍狩りに。

先日、房総にお住まいの知り合いが、
お近くで蛍をごらんになったそうで。
自然の状況下で、蛍を見かけなくなって、はや数十年!

江戸では立夏の後、40日たった頃から蛍・・・・
といいますから、いまごろは蛍狩りにでかけているのだろうなあと、
あこがれてしまうわけです。

江戸ならば、ちょっと郊外に足を運べば、
蛍の名所はあちらこちらにあります。
以前ご紹介した「ほ、ほ、蛍」の項では、
御茶ノ水を取り上げましたが、
谷中の蛍沢(現・台東区谷中)は特に有名です。


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現在も谷中に健在の宗林寺は、
家康が入府の折、駿河から連れてきたという古刹。
この本堂のそばに幅9尺(3メートル弱)、
長さが10間(20メートル弱)ほどの池があって、
ここが蛍沢と呼ばれていたと古い記録にはあるようです。
後年はこの一帯を蛍沢と呼ぶようになったらしく、
現在でも「蛍坂」という細い坂があります。




ではしばし、江戸の人々と一緒に、蛍狩りをお楽しみください。

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左の、春信の描く蛍狩りは、
ロマンチック。
小川には水車が回っています。




右の、英泉のは娘と
おっかさんかも。
蛍狩りで、
こんな人たちと出会えたら、
うれしいでしょうね




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ここも蛍狩りの名所、高田の落合。


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蛍をとるには、先の葉だけを残した笹竹を使うのね












ほら、こんなにとれたゼイ!」f0186852_1141332.jpg










おや、あちらが賑わしいですなあ










こうやってとった蛍は
「籠中にいれて家裹(いえづと・おみやげのこと)とす」ることが多いようです。


郊外までなかなか行けない人も多いですから、
町には虫売りがやってきます。
もちろん蛍もあります。
蛍は、こんな籠に入れて売られるんですね。

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丸いのや四角いの。
黒の紗を張って、蛍の光を生かすように、
工夫されているのでしょうね。
どうやって作られているのか、
不思議なほど繊細なものもあります。






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「源氏絵」でももちろん、蛍狩り。
なんと賑やかな御殿のお庭でしょう。
お女中たちのはじけるような笑い声、
聞こえてきそうです。

そういえば、「源氏絵」って、とっても不思議な空間です。
 いつかご紹介しますね。







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by edo-ukiyo-doll | 2012-06-19 13:21 | 江戸歳時記 | Comments(0)

まくわうり


今年1月に開催された個展「江戸のちるど連」に出展した作品を、
ときどき、ご紹介していきますね。


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「まくわうり」


徳川家康も「暑邪を除くべき良薬」と推奨した「まくわうり」は、
夏の定番の水菓子(果物のこと)。
「真桑瓜」と書きます。
真桑村(美濃国。現・岐阜県本巣市)に産出し、
朝廷に献上したところ大そう喜ばれ、
時が下って織田信長がこれを大いに保護し、広めたのだとか。

縄文時代の遺跡からも、種が出土しているという昔からの食べ物です。
原産地はアフリカや中東で、
中国・朝鮮半島を経て、日本に入ったようです。

浮世絵などで夏の景には、
西瓜とともに描かれる、水菓子の代表的存在です。

もとにした浮世絵は歌麿の画。
時代的に母は凝った結い方に灯籠びんという大きな髪形で、
薄物の単衣を着ています。
子どものほうも周囲は剃り上げているのに、
頭頂は両輪にした毛先をさらにその上に載せて、ずいぶんおしゃれです。


  *緑色部分の文章は、展示用の解説文です。


この作品は、小物作りが大変でしたが、楽しかったです。
母の手のまくわうりは、皮が剥けている部分が難しいと思ったのですが、
案外うまくできたので、そんなときは鼻歌も出ます060.gif

髪形も、文化文政期以前なのに、歌麿の描く頭は凝っていて、
いったいどうやって結っているのだろう?
という結髪の分析から始めますが、苦労が多い分、
なるほど、こうなってるのか!
と解明できたときには、ニンマリします026.gif


以前、まくわうりのお話を書いたのですが、
それをごらんになった府中の昔のまくわうりを再興されている方から、
お問い合わせがあったり、
江戸時代に栽培されていた野菜・水菓子の復元?は、
ますます活発になってきたようで、うれしいですね!
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by edo-ukiyo-doll | 2012-06-08 09:32 | 「江戸浮世人形」 | Comments(0)

ほととぎす聴く

江戸では、桜が終わると藤が咲き、
鰹とほととぎすを心待ちにします。
立夏を過ぎるあたりからほととぎすが鳴き始めると、
物の本にもあり、浮世絵にもたくさん描かれています。


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「ホ・ジュン」という韓国時代ドラマをご存知の方もおいででしょうけれど、
それにはイェジンという、品のよいうつくしいお嬢さん(実は女医)が登場します。
故あって、彼女が宮廷を去ろうと決めた夜、池のほとりに座り、
「ああ、ホトトギスの啼き声が、心にしみるわ・・・」
と空を見上げるのです。
そのシーンがあまりに美しく印象的で、ほととぎすの声を聴いてみたくなりました。

すると先日少し郊外で、暮れ方の空を甲高い声がし、
それがほととぎすと知りました。
浮世絵ではたくさん知っていますのに、初めて声を聴いたので感激でした。
朝鮮半島の古の都でも、江戸でも、ほととぎすの鳴き声が聴こえていたのですね。
また一歩、江戸に近づいた気がしました。



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ほととぎすは初夏を告げる鳥で、
南アジアから渡ってきます。
鳩より少し小さいかもしれません。
かつて東北では
「ほととぎすが鳴いたら、
田植えをせよ」と言われたとか。



「杜鵑」「時鳥」「不如帰」「子規」など、たくさんの表記がありますが、
江戸では「郭公」をほととぎすとも読みました。
確かにほととぎすはカッコウ目カッコウ科の鳥ですが、
啼き声はぜんぜん違います。

小石川白山はことわざに、
「この国でほととぎすはこの地から啼き始める」といわれることから、
ここを「初音の里」とも言われます。
また高田、雑司ヶ谷、御茶ノ水、神田社、谷中などなど、
江戸中で見かけますが、とりわけ木々のゆたかな西の方に多くいたようです。


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「聞いたかと問へば食ふたかと答へ」
とは、ほととぎすの声はもう聴いたかい? ときけば、
鰹はもう食ったのかよお、と答えが返ってくる。
初鰹に狂乱の態の江戸っ子ですが、
ほととぎすにもずいぶんな思い入れがあるのですね。


でも鰹もほととぎすも時がたち、
珍しくもなくなってくると、
ほととぎすは、
「江戸の山の手にはほととぎすが多くて、
朝からやまずなき暮らして、大変にうるさい。
なかない日もあればいいのに!」
など言われます。

「五月雨と一緒に飽きる時鳥(ほととぎす)」

なるほどね。










^.^
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by edo-ukiyo-doll | 2012-06-03 13:31 | 江戸歳時記 | Comments(0)


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