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藤の思い遥か


しばらく江戸のブログをサボっておりましたが、季節は移りすっかり入梅。

この時期の植物の成長は早く、10日ばかりロンドンに行ってる間に、
楽しみにしていた「グミ」の実が、もう熟してなくなってた(食べられちゃった!)。
それはそうと、おくればせながら、「藤」のお話しを少し。

ずいぶん昔、レンガ造りの家のファサードに、
藤の花が咲き誇っている写真に魅せられたことがあって、
それはロンドンのチェルシーというところで撮影したと書かれていた。
以来、チェルシーの藤が見てみたいと思っていたのだが、
先日、長年の思いがかなった。


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ロンドンの中でもチェルシーは高級住宅街といわれ、まさになるほど。
この時期は、チェルシー・フラワー・ショウという
世界的にも有名な花の祭典が行われるのだが
(今年は100周年記念でチケットはすでに完売だった)、
今年は異常気象で寒くて、未だ薔薇も咲いておらず、
代わりに藤がまっさかりで、あっちにもこっちにも藤の絡まる家々。



藤は日本や中国、それに北アメリカも原産地。
英語でwisteriaまたはwistaria(ウィスタリア)というが、
この名前はイギリス人の動物学者にして植物学者のThomas Nuttallトマス・ナトールが、
尊敬する医師Casper Wistarキャスパー・ウイスターに因んでつけたといわれている。
イギリスではWisteria Floribunnda、
俗にJapanese Wisteriaという藤が一般的なようで、
日本のように、棚仕立てにはしないが、
いわれてみればなにやら、日本的な雰囲気をも感じられる。


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万葉の時代に、こんな歌がある。

      須磨の海人の塩焼衣の藤衣
            間遠にしあればいまだ着慣れず

この「藤衣」というのが気になった。
藤衣は藤色の衣ではなく、藤の蔓で織った粗末な衣服だという。
藤の蔓の皮をむいて灰汁で煮て柔らかくしたのを、
さらに叩いて繊維にしたものを、糸として用いた織物でとても目が粗い。
だが、とても丈夫で茨の中に入っても、棘から身を守れるほどだそうな。
なので、江戸時代まで野良着などとして用いられたようだ。


上の歌は、海人が塩焼きのときに着る「藤衣」は、
目の粗い織物なのでいまだに肌になじまないものだ、
というほどの意味になるだろうか。

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さらに進んで、平安期に夭逝した歌人藤原道信に、
   
     限りあれば今日ぬぎ捨てつ藤衣
            はてなきものは涙なりけり


というのがあって、
ここでは藤衣は「喪服」ということをはっきりと指している。

粗末な衣類である藤衣は、
平安の頃から身分の高い人々は、これを喪服として用いたという。
後年、喪服は麻布も用いるようになったけれども、
親族や葬儀を執り行う人たちは、必ず生成りのこの藤衣をまとった。

道信の歌は、喪に服しているのにも期限があるので、
今日で喪服は脱ぎ捨てるけれど、
涙だけはいつまでも果てなくこぼれるのさ・・・・・・そんな意味だ。


藤の花と藤衣。
華やかな花の一方では、死者を弔う衣でもあったことが、
藤への思いをいっそう深めさせる。

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by edo-ukiyo-doll | 2013-06-10 15:39 | my favorite | Comments(0)


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