「わらび」・・・ごぞんじでしょうか?
わらび、「蕨」と書きますが、少々難しい。
春の山菜の代表格で、雪が解けるとよく道端に車を止め、
ちょっとした斜面で、ポキポキとっているひとも見かけます。
生では食べられないので、灰と熱湯であく抜きして、
春の食卓を飾ります。
これを「早蕨(さわらび)」といって、
古くから文様にも取り上げられています。
先っぽのクネクネがかわいいのかも。
これは春信の画ですが、
振袖の表着には、早蕨に結び文。
よりそう二人の初々しさがあります。
左は振袖の拡大したもの。
先っぽのクネクネが「早蕨」を
表しています。
春信は早蕨文が好きだったのか、
ちょこちょこ使っています。
これも春信の画ですが、海辺に立つ母娘でしょうか。
裾も帯も振袖も風にたなびいて、笠を手で押さえるほど。
娘の振袖が、早蕨文。
早蕨の上にかかるのは、雲ではなく春霞のつもりかもしれません。
ちなみに母の裾には、木賊文(とくさもん)。
木賊は田舎ならどこにでも生えていますし、 園芸好きな方なら、よくごぞんじでしょう。
まっすぐな空洞のストロー状の茎に、黒っぽい節があって、 そこからポキンと折れます。
昔はサンドペーパーの代わりに使いました。
私は今でも、柔らかい磨きに使うことがあります。
右の画は3代豊国の作。
幕末に近くなると、春信の時代と違って、
文様もリアルに描かれるようになります。
早蕨文は「蕨手(わらびで)」また単に「蕨文」とも呼ばれています。
源氏物語でも「わらびやつくづくし(土筆)をかわいい籠に入れて・・・・」
というようなことが書かれていて、
早春の楽しみの一つだったのだなとわかります。
蕨はその形の面白さから、さまざまにデザインされています。
のし袋の「のし」も印刷物が一般的になる前は、
筆で描いていましたが、上に小さいコブがつく。
これを「蕨のし」と呼んでいますが、
印刷物でもちゃんと「蕨のし」になっているのがあります。
「早蕨」、「さわらび」という音感とともに、
この先っぽクネクネした文様、かわいらしいし、ああ、春がやってきた!
と思わせるのです。
お散歩に、あなたもちょっとした春、見つけましょうね。