お江戸の夏の宵は、なかなかに賑わしい。
『江戸浮世人形』として少しずつ拡張している作品「夕涼み」は、
まさにその江戸の夏を描き続けている。
そのなかから、2作。
大きなちょうちんを下げた男は、辻占売り。
辻で占いをしていたところから「辻占」と呼ばれるようになったが、
辻占売りのスタイルもさまざまで、これは「かりんとう売り」の格好。
元は深川の「山口屋」といって、かりんとうを売る店の委託で、
かりんとうを売っていたのを、
次第にかりんとう売りから、辻占売りになっていったという。
また一説では、最初は辻占だけを売っていたのが、
いつしか、せんべいやかりんとうに、
札をつけて売るようになったというものだ。
夜に、大きなちょうちんを下げ、
「香ばしやかりんとう・・・恋の辻占・・・」
と歌い歩いたそうだ。
一方右の写真は「枝豆売り」。
かの『守貞漫稿』に、
夏の夜にこれを売る。
特に貧しい層の人々の生業で、
売り手は男女両方いるが、
江戸では女子が多いとある。
時代が少し下ったころのものと思われるが、
「あわれさは 枝豆売りに 首二つ」
という句が残っている。
必ずといっていいほど、赤ん坊を背負っての仕事だったことをいっている。
京阪では「さやまめ」というが、
江戸では枝付きのまま売るので「枝豆」と呼ばれる。
辻占は年間を通してあったが、
枝豆売りは当然、夏だけの風物詩となる。
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