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寒い夜はさしつさされつ小鍋たて


はじめて小鍋立てなるものを知ったのは、
10余年前、池波を読んでいてだった。
「鬼平」にも、「梅安」にも登場する。
「剣客商売」には、さてどうだったか、記憶が定かではない。

「しんねこ」という言葉も、池波の本で知ったのではと思うが、
まあ、しんねこな二人が食べるには、小鍋立て。
親密な二人が、親密にお話なんかしちゃってる様子が、
しんねこ・・・って感じらしい。
そんな粋なことになったことがないので、
よくはわからないが、小鍋立てならよくやる。

小鍋立ては、別に二人でなくったってできる。
一人で十分。
小さな土鍋に出汁を入れ、煮ながら食べる。
材料は2,3種類。
それ以上は、小鍋立てには、ちと重い。

池波に出てくる材料は、
「大根と浅利の剥き身」とか、「豆腐と大根」「豆腐と油揚げ」
など、本当に簡単なもので、薄い出汁で煮ている。
材料を入れるそばから引き上げて、はふはふと食するのがよろしい。





寒い夜はさしつさされつ小鍋たて_f0186852_2338221.jpg  左は小鍋たてを楽しんでる画だが、
 「じいさんは慈姑(くわい)の煮物を肴に酒を飲む」
 てなことを書いてあるらしい。


寒い夜はさしつさされつ小鍋たて_f0186852_23455163.jpg
                    上はこれをもとにした作品「小鍋たて」。
                         高さは6センチほど。




火鉢でね、小鍋立て。
小鍋立ては、独身の男が多い江戸で生まれた、独身男料理。
簡単、便利、この上ない。
それがいまや、江戸の粋な食べもの、食べ方となって
「サライ」の特集なんぞになっているのだから、たいしたものだ。


よくやる小鍋立てはというと、
「京菜と油揚げ」、「豆腐と大根と鱈」、「豆腐と蛤」など。
以前「はまぐりびな」といって、
蛤の貝の中に入る小さなおひな様をつくる教室もやってたので、
せっせと蛤をいただく羽目になったことがあった。
だもんで蛤にはちとウルサいが、
煮すぎると、蛤以外も貝は硬くなるのでご注意。


一番好きなのは、鴨と芹を鉄鍋でいりつけ、酒、砂糖、
しょうゆで味付けして、卵をつけていただく。
鴨というと贅沢と思われるかもしれないが、
故郷の津軽ではこの時期になると、肉屋さんでフツーに「鴨肉あり升」の張り紙が出る。


寒い夜はさしつさされつ小鍋たて_f0186852_204037100.jpg

上の浮世絵は幕末のもので、桑の長火鉢の五徳に鉄鍋をかけて、小鍋立てをする女。
膳もかなり豪勢で、芸者といったところか。
こんな具合に、小鍋立てはごくフツーになされていた。
それを、「粋な食べ方」にまで昇格させたのは、池波の腕かもしれない。



ちなみに私、今夜は、新米のきりたんぽ。
小鍋立てじゃなくて、ごめんなさいね! でへへ、ばり、うまいっす!













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by edo-ukiyo-doll | 2010-11-06 23:46 | 江戸の食べ物