今年は10月4日が十五夜です。
旧暦の8月15日を十五夜としていますが、いつもの年より遅いのですが、
これは旧暦で5月が2回あった(閏5月)ためです。
ただし満月は2日後になります。
外房の野山にはもうススキの穂も見ごろになり、
あとは晴れの夜空を待つばかり。
旧暦8月の十五夜には、お神酒に団子、芋などをお供えしますが、
江戸と京都では少し違います。
江戸では三方に丸い団子、芋は衣被(きぬかつぎ)といって、
皮をむかない茹でた里芋を供えます。
一方京では、団子はしずく型(先のとんがった形)にして、
きな粉を絡めたのを12個、
皮をむき醤油で炊いた里芋も12個、団子とともに三方に盛ってお供えします。
閏年(今年も閏年)には13個になります。
8月15日の月は「仲秋の名月」と呼びますが、
「芋名月」とも。
ジャガイモだって、さつま芋だってあるじゃないか、
なんで里芋? と思うかも。
ジャガイモが日本で普及したのは
幕末の飢饉の救済のためですし、
さつま芋はそれより早く18世紀半ばでした。
でも、里芋はなんと、稲作より早い時代に、
すでに主食とされていたのです。
なので、江戸時代に「芋」といえば「里芋」のこと。
さつま芋の焼き芋は、江戸時代後期になってからです。
万葉集では「宇毛(うも)」と表記されています。
「蓮葉者 如是許曽有物 意吉麻呂之 家在物者 宇毛乃葉尓有之」
蓮葉(はちすば)は かくこそあるもの
意吉麻呂(おきまろ)が 家なるものは 芋の葉にあらし
『万葉集』 長意吉麿
里芋はまた神事の供物という性格も持っていて、
正月にも、餅と同じくらい重要とされる食物です。
仲秋の名月頃はちょうど里芋の収穫期で、
芋の収穫の祝いのために十五夜の行事が民間にも根付いた、
という説もあるほど。
十五夜の供物としては、皮付きのまま茹でた衣被ですが、
江戸っ子も芋の煮ころがしが大好きで、
『日々徳用倹約料理角力取組』というおかずの番付でも、
精進方の秋の部に「いもにころばし」とあります。
里芋の英語名は「taro」で、つまり東南アジアやオセアニアの島々などで、
たくさんの種類が食用とされています。
『江戸浮世人形』の「月見団子」→山芋が山に自生する芋であるのに対し、
里で育つので里芋と呼ばれたようです。
ビタミンB1(でんぷんをエネルギーに変える働きをする)や
B2(脂肪の燃焼を助ける働き)、またたんぱく質が豊富。
粘る性質のムチンは、滋養強壮や消化の促進、
潰瘍を予防する働きもあるようで、
免疫力アップや、脳細胞を活性させるはたらきのある、
ガラクタンを含んでいます。
山形の「芋煮」は牛肉も入り、
まさに里芋料理の極めつけですね。
里芋の皮をむくと手がかゆくなりますが、
これはシュウ酸カルシウムのためとか。
酢を少し手に取って洗えばかゆみはおさまると、
子どもの頃に教わって実行しています。
(皮膚の弱い方はやらない方がいいですよ)
冷凍里芋は便利ですが、
やっぱりかゆい思いをしても、皮をむいた里芋のうまさは格別。
今夜は里芋の「にころばし」にしましょうか。
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