江戸の夏の宴席で、時折見かける不思議なものがあります。
大きな鉢の中に、透明な液体の中になにやら細かなものが、
浮いたり沈んだり。
なんでしょう?
調べてみたらこれは「水の物」と呼ばれる立派なお料理らしい。
もっと以前には「冷やし物」と呼ばれていそうです。
この細かなものはなにかというと、小さな「さいの目」に切った野菜と果物。
大根 瓜 茄子 蓮 黒くわい りんご 桃 スモモ 杏 梨 梅干し 栗
などで、そのほかにもそのシーズンの旬の物ならなんでもいいらしいです。
細かく切ったものを、冷たい水に入れるだけ。
室町時代にはすでにあって、江戸時代を通して存在していたというのは、
これらの浮世絵を見てもわかります。
氷などない時代、冷たい井戸の水などで冷やした「水の物」
夏の宴席には洒落たごちそうだったようです。
箸や指でつまんで、塩をちょっこしつけて食べる・・・・・・
鉢の中の水も、野菜や果物のフレーバーが移って冷たくて、
夏の酒もいっそうおいしくなったのかも。
お次は「白玉」。
白玉は現代ではほとんど工場で製造されますが、
江戸の頃は「寒晒粉の団(団子)」といって、
粉にしたもち米を水につけ、それを天日にさらして乾燥させる
という作業を何度も繰り返して作られます。
これもまた凍り付くような「寒」の気候をうまく使ったもので、
この粉に水を加え、丸めて湯がけば浮き上がってきますから、
これを冷水で冷やすと、つるんとした「白玉」のできあがり。
以前ご紹介した「冷や水売り」でも、
冷たい水に小粒の白玉を入れてくれます。
「白玉売り」も、夏の江戸には欠かせない担い売りです。
「汁粉にもこれを加ふといへども、
路上売りは冷水に用ふるを専らとして、夏月にこれを売る」 白玉は汁粉にも入れるけれど、
路上で売るのは冷水に入れて売るのだけで、夏の間の商売、という意味です。
白玉には紅(食紅)を入れる時もあって、この浮世絵はまさにそれでしょう。
白玉が少し平たく見えますが、小さく丸めたのを親指と中指でキュッと押しつぶすと、
茹で時間も短く、食べやすくもなり、たぶん少し平たく作ったのでしょう。
大鉢の脇にあるのは、砂糖入りのきな粉にも見えます。
小さめの丼に入った方も、やはり白玉団子の小ぶりなものかと思われます。
楊枝でさして食べるのでしょうね。
水には砂糖が溶かしてあるのかもしれません。
今、大ブレーク中の「タピオカ」に何やら似ている
江戸の「白玉」です。
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