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牡丹に紅葉の薬喰い

江戸の町では今頃年末を迎え、あちらこちらで歳の市が開かれています。
そして寒いこの季節に密かに人気だったのがジビエ。
ジビエは野生なら鳥も含めたものですが、
もちろん、江戸時代にも、牛や豚も含め獣肉は「薬喰い」と称して食べられます。


f0186852_6274271.jpg広重の『名所江戸百景』のこの画「びくにばし雪中」。
左に「山くじら」という看板が見えますが、
ここが獣肉を食べさせる店です。
くじらは魚という認識なので、獣肉はさすれば「山」の「くじら」
ということにしておくかあ、そんな発想でしょう。
さて、びくにばし(比丘尼橋)は、
現在の銀座1丁目あたりになりますが、
画の右手に描かれるのは外堀の石垣で、
「山くじら」の看板の右手に見えるのは、
数寄屋橋御門(現在の数寄屋橋)の火の見やぐらです。


幕末にはこのような、獣肉を食べさせる店が、
江戸に10余軒ほどもあったとか。
麹町の平河町三丁目の「ももんじ屋」も有名ですが、
ここもまた御城(江戸城)に近い場所です。

江戸時代に獣肉を食べることは、
法的に禁止されていたわけではないので、
このように将軍のお膝元で、店を構えていられます。
彦根藩では毎年、将軍家と御三家に、
赤斑牛の味噌漬けを献上していたほどです。
ただし彦根の家中では、牛の中で赤斑牛だけは食べても穢れないという、
ステキな主張をしています。


しかし仏教では獣肉は穢れたものとされますから、
獣肉を食べると数十日は寺の門をくぐってはならない、という禁忌は強くあります。
たとえば牛肉を食べると150日は、お寺には行けません。
現代と違って、江戸時代の人々にとって寺社参りは、
私たちがカラオケや映画に行くような、
日常に欠かせないエンターテイメントですから、
これに行けないのはキツイです。

それと近所や、まして女房にバレたら、こりゃあまずい。
四足を食べるなんて、罰当たりだし、気色が悪いことなのです。
でもね、一度食べたら病みつき・・・・・・なんてこともありますよね。


f0186852_633811.jpg
これは『仮名手本忠臣蔵』五段目の猪と間違えて・・・の場面

鹿、猪、兎、牛、狸が人気の順番。
大抵は葱を入れた鍋にします。
おおっぴらにはできないので、「薬喰い」と称し、
滋養があるから「薬」なのだと言い訳します。


蕪村の句に
  「薬喰い 人に語るな 鹿ケ谷」
というのがあります。
やはりおおっぴらに食べるのは気がひけるのでしょう。
そこで獣肉を大和言葉に置き換えて・・・・・・なんて、
苦肉の策が現代にまで引き継がれていますね。

猪を「牡丹」というのは、獅子には牡丹がおきまりですから。
鹿は「紅葉」。これもまた花札でもおなじみの、決まりごと。
牛は「ワカ」。もちろん「牛若丸」ですよね。
牛はまた「冬牡丹」とか、「黒牡丹」などとも呼ばれたとか。

忌み嫌われ、おおっぴらに食べられませんが、
抜け道はどこにでもあるもので、
蕪村には
   「薬喰い 隣の亭主 箸持参」
というのもあります。

この「箸」がクセモノなのです。
なぜ箸なのか? 

わざわざ「持参する箸」のナゾはまたいずれ。









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by edo-ukiyo-doll | 2013-02-01 21:17 | 江戸の食べ物

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